<第2回応募作品>『ちいさな ダルマ』著者:MOMO
2007 / 04 / 06 ( Fri ) 今からもう10年も前のおはなし
まだ携帯よりポケベルを使っている人が多かった頃のおはなし あの頃の私の初めての恋のおはなしです 「お前さ、明日は寄り道とかしないでさ、早く帰ってこいよな?な?」 「うん。」 そういいながら電波の悪い電話を持ちながら、電波を探す・・ 「きいてる?あれだぞ?ちっちゃいやつだからな?2つだからな?」 「うんうん。」 「あれ知らないと地元の人間じゃないぞ? まぁ明日よろしくたのむわ。」 「うん、「ちいさい」の「2つ」ね。」 いつもの約束の時間の約束の電話 「赤坂康彦のミリオンナイツ」を9時40分まで聴いてからお互いにポケベルで連絡を取り合う 「イマカラデンワスルネ」 ※2※2 12 71 21 91 44 04 03 01 33 93 54 ♯♯ これをポケベルで確認してから、居間にある電話の子機をこっそり持ち出して、 そして自分の部屋で電話が鳴るのを待つ。 彼は公衆電話に駆け込み、私の家へ電話をしてくれる。 プルル プルルルル・・・ 私達のデートはこうして始まる・・・・。 彼は中学の時の同級生で遠くの高校へ進学し、規則の厳しい寮に入っていた。 少ししかない自由時間を使って、毎日のようにテレホンカードを持って9時40分に私の元へ電話をくれた。毎日の様に電話をくれた。 そして、話すことはさっきまでお互いで聴きあっていたラジオの話や今日あったお互いの話や着きたての手紙の話、そして今度会える日について・・・等など。 「ダルマね!」 最後にまた念を押してきた。 「はいはい・・わかったから。」 なんで神代の人はこんなにダルマにこだわるのだろう・・・とちょっと飽きれた声で言ってみた。 引っ越してきて2年しかたたない私は首を傾げてしまうのだが、とにかくとっても重要らしい。 「友達にも言っちゃったんだからさぁ、宜しく頼むよ?じゃあな、切るね・・・切るよ?」 「うん。」 少し切るのを惜しみつつ、彼のいる場所から聞こえてくる風の音を聞いたりしながら しばらく沈黙し目を閉じてみる。 電話からは、カチャン、カチャン とテレフォンカードのカウントが聞こえてくる。 「おやすみ・・・3秒後に切るね・・・・・。」 電話を手で出来るだけ遠くに離し、電話の切れる音を出来るだけ聞かないようにしていた。 プープープー・・・・ 切れてしまった電話の音はとても無機質で嫌いだった。 さっきまでの会話が遠くからのものだと感じてしまうからだ。 翌日、春休み前の最期の期末テストも終ってやっと遊ぶことが許された放課後、友人達との会話もそぞろに『ダルマ市』は、夕方には店じまいをしてしまうので、自転車を漕ぎ、深大寺まで急いだ。お寺の前の坂道を勢いよく下る。 辺りはそろそろ祭りも終わりといった感じでお客さんも減って薄暗くなっていた。 少し息を切らせながら、自転車をとめる。 「小さいダルマ 小さいダルマ・・・。」 と呪文のように言いながらいくつもの出店を廻った。 もう店の半分は店じまいしている。 開いている店には、これでもかというほどの大きなダルマが何百個と重なって並んでいた。 小さいダルマ・・・と目でダルマをおっていると、それらしきものを発見した。 「・・すいません。一番小さいダルマ貰えますか?」 「えぇ〜?小さいダルマかい?」 「縁起ものだし、デッカイの買ってきなよぉ〜。」 と景気よく言われるが 「いえ、約束なので、一番ちっさいの2つください。」 と、よく分からない言い訳をしながら、小さいダルマが出てくるのを待った。 「はい2個ね!どれがいいかい?」 そういわれ はじめてダルマをまじまじと見た、髭の書き方が微妙に違い顔の表情がひとつひとつ違っていた、顔をいくつか見比べて2つ選んだ。 「はい1500円ねぇ まいどぉ!!」 「ありがとう。」 そう言って、ビニール袋に入れられたダルマを片手に彼の実家の辺りをわざと迂回し散歩がてら帰った。 「全然かわいくなぁ〜い。今日ぜったいいってやろぉ〜。」 と独り言をつぶやきながら彼へ書く手紙の内容を考えつつ家へ帰った。 家に着き、さっそく机の上にふたつのダルマを並べてみた。 「やっぱり、かわいくない・・・・。」 そういいならが指でダルマを押してみるとコロンっと転がりながらもすっくりと起きてきた。 「ホンモノじゃん。」 ちょっと感心していってみた。 母に靴箱を用意してもらい、ダルマを新聞紙でグルグルと巻きいつものように手紙を書いた。 □ 手 紙 □ DEAR:HIRO HELLO〜!! 今日ちゃんと約束通りかったよぉ!! しかたがないからねぇ〜。 でも、やっぱし、ぜんぜんかわいくなかったよぉ。 私がダルマを嫌いになったわけって話しなかったっけ? 小学校のとき中学受験の前に買ったダルマを弟が転がしまくって、 しかもひっくり返ったままで、すっごくムカついてって、 確か言ったよなぁ〜・・・(^^) まぁいいやとりあえず、右がHIROの分、左が友達の分だからね。 ちなみに右はつっついて転がしてやりました。(ニヤリ) まぁ〜、めん玉でも書いて、立派なパイロットになってくだせぇ〜。 私は立派なデザイナーになってやるぅ〜。 MOMO 手紙はいつもわざとガサツに喋り言葉の様に書いていた。 封を開けたとたん喋りだすように、できるだけ近くにいるような感じで。 手紙を書いてから2日が経ち手紙とダルマが彼の元に到着した日、彼から電話が来た。 第一声から 「おい、なんでこんなデッカイんだよ!!(笑い声)」 「しょうがないから、友達にも渡したけどさぁ。」 「え〜?!」 どうやら注文された商品とは違ったようなのは分かったが、 なんだか状況が読めない私は、ちょっと脹れて 「でも、それいっちばんチッサかったよ?」 と言ってみたが彼はその後、ダルマに目を入れた話しや、そこに託した夢の話や、どんどん話題は変わり、最後には笑い話でお腹を抱えながら、 「じゃ〜ねぇ。」 といって電話をきっていた。 彼なりの優しさだったのだろう。 春休みはもうすぐだ。彼ともうすぐ会える・・・・会いたい。 そう思いながら、ダルマを思い出して「デカスギル」といっていた彼を思い出しベッドのなかでくすくすと笑った。 春休みに入って2・3日した土曜日の午後2時頃、彼からポケベルが鳴った 「イマ チョウフにツイタ 18ジ レイノバショデ アオウ。」 例の場所とは彼の家に程近い市場だった。 夏休みにはよく登って夜景を眺めながらおしゃべりしていた。 約束の時間より少し早くに市場の屋上に登り、 彼の顔や香りや声を思い出しながら、最後の電話のやりとりを思い出しながら、 彼が来るのを待った。 いつもなら週に会えて4・5時間、会えないと隔週やそれよりも会えないこともあったのだが、長期休暇は長期の外泊が許されているため、地元に戻ってくる。 束の間の『普通の高校生』みたいなデートを想像しながら、幸せになり深呼吸した。 明日から何して遊ぼう・・・。 予定の時間になり、エレベーターの音がした。 彼が来る。そわそわしている私に、 「おう。」 何事もなさそうに言って近づいてくる彼の口元だけが帽子から見えていた。 帽子を目深にかぶっている彼の顔を覗き込もうとした瞬間、 ギュっと抱きつかれた。 「おひさしぶりぃ。」 と照れながら彼の胸の中でいうと、 彼は私の手をつかみ、その手の中にコロリと何かを渡してきた。 彼は私にその手を握らせたまま、 「ただいま。」 といってきた。 「おかえり。」をいう間もなく 「手、広げてみぃ!」 という彼。 そこには、小さな 小さな 小指の第一関節よりも小さな 豆粒のダルマがいた 「・・・ダルマ!! ちっちゃい・・・かわいい・・・・。」 彼が汗まみれな訳がやっと分かった。 「だろ〜?!」 得意気な彼の笑みが逆光で口元だけ見えた。 「おかえりなさい。」 私は、小さな 小さな ダルマをギュッとにぎり 汗まみれの彼に抱きついた。 あれから10年・・・・。 彼とはお別れしてしまったが、まだにっこりとダルマが笑っている。 まだ調布に住んでいるのは、 深大寺に癒しを求めに行くようになったのは、 彼と付き合ったからだろうと思う。 地元でない友人を調布に呼び寄せては深大寺に行く始末。 ねぇ・・・ 深大寺っていいね 彼にもし伝えることができるのならば・・・ 言いたい 私にちいさなダルマをくれて 私に地元をつくってくれて ほんとうにありがとうと・・・・ (了) ----------------------------------------------------------------- <著者紹介> MOMO(東京都調布市/27歳/女性/主婦) |
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